過去も未来も無い、意識すべきはただこの現在の瞬間のみ
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寒い季節のロシヤ文学 1
ゴンチャローフ 「オブローモフ」
19世紀ロシア文学黄金期を代表する作家の一人として揺ぎ無い認知を得ているゴンチャローフ。
その代表作「オブローモフ」も同様にロシア文学を代表する一作なのではあるが何て言いますか、所謂「文学」と言われる類のものが好きな人の中でもこの作品をスルーしている人って何気多いのではないだろうか。
これを読んだことのある人と言うのは余程のロシア文学好きか暇人だろう。(言い過ぎか)
そこそこ長い作品であるとはいえ決して読みにくいと言うわけではないが..... ダラダラしてて少々たるいですね。
第一章ではオブローモフの夢の中の描写を除けば彼の部屋の中から一歩も外の世界に出ていない。
第二・三章ではオブローモフとオリガの助長に感じられる恋愛描写が延々と続く。(て言うかゴンチャローフって生涯独身だったというのに恋愛心理描写はびっくりするくらい精密です)
これだけでも途中で折れる人が出てくるのは目に見えている。
しかしこの作品が長い前置きから動きを見せ始め、その本質を曝け出すのは最終章の四章であるのですが......... (シュトルツの友への友情にはほろりとくる.......)
高潔で汚れの無い優しさに溢れた心を持つが世の中全ての物に対する無気力・倦怠感に陥り、それが骨の髄まで染み付いてしまっているが為に領地の整備もせずにいつまでも精神的に眠り続け、無為の生活を送る男・主人公であるイリヤー・イリッチ(オブローモフ)。
「進歩派」であり「活動家」、倦怠を嫌い常に生活の中に存在する勤労を忘れることのないオブローモフの友人、シュトルツ。
互いに異なる生活環境で成長したが故にそれぞれ異なる点において精神的純粋さを守った結果、対象的な性格を持ち合わせることとなった二人の人物の対比を軸に二人の間で揺れる女性、オリガの姿を通し「社会的人間としての『生活』とは何か」という問いを色々な面から突きつける作品。
勿論舞台は農奴制の上に地主・貴族制が成り立っていることが背景にある19世紀ロシア、現代とシュチエーションにおいてそのまま置き換えることは出来ないがそれでも
圧倒的なリアリズムと「警告」をこの作品は現代人に与える。
ドストエフスキーのどの作品よりも、です。
オブローモフは今で言う「ニート」である。
自分一人では何一つすることが出来ず、子供の頃に育まれ、精神的に植えつけられた桃源郷の幻想によって現世に溢れる困難に打ち勝っていこうとする意思の力・忍耐力は奪い去られ、ついには愛の感情でさえも彼を深淵から救い出すことは出来なかった。
彼の悲劇は慢性的倦怠感により身も心も自身の未来も蝕まれ尽くされてしまったことによる。
しかし
ラストのオブローモフの姿、即ち無用者でありながら自分なりの「平穏」を手にし死んでいった姿からは果たして何人においても、いかなる場合おいても「未知の外の世界の空気に触れること」「先へ進むこと」が当人にとって幸せと言えるのか。
そんなことを考えさせられます。
そして彼の死後も不器用な召使ザハールやおかみのアガーフィヤは彼への忠誠・愛情の念を捨てなかった。
寝ているばかりで何も自分ではすることが出来なかったオブローモフもやはり、本質的に無用者では無かったのである。
取るに足らないと思われている人物への無償の愛情、やはりこの作品もロシア文学の明確な血筋を引いている。
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